2024年03月29日 1815号

【「経済安保版・秘密保護法案」審議入り/外国軍事企業との共同開発、軍事経済へ/知る権利 報道の自由が危ない】

 「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」が2月27日、閣議決定され、3月19日の衆院本会議で審議入りする。

 どんな法案か。「秘密保護法」廃止へ!実行委員会などは3月6日、院内集会を開き、立正大学名誉教授の金子勝さんと秘密保護法対策弁護団事務局長の海渡(かいど)双葉さんから話を聞いた。

 金子さんは法案の問題点を次のように指摘した。

 保護の対象を「重要経済基盤に関する情報であって我が国の安全保障を確保するために特に秘匿することが必要であるもの」(第1条)とするが、特定されていない。行政機関によって勝手に保護すべき「情報」が作られ、処罰の範囲が拡大する危険性がある。

 セキュリティ・クリアランス(適性評価)=「重要経済安保情報の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないことについての評価」(第12条1項)のための調査事項として「家族・同居人の氏名・生年月日・国籍(過去の国籍を含む)・住所」「犯罪・懲戒歴」「薬物の濫用・影響」「精神疾患」「飲酒の節度」「信用状態その他の経済状況」などを列挙(同条2項)。適性評価は「対象者の同意を得て」実施(同条3項)となっているが、企業の意向に逆らって従業者が調査を拒否することは困難で、本人の意思に反した適性評価はプライバシー権、思想・良心の自由の侵害となる。本人以外の家族・同居人は同意なしに調査される。

 調査拒否者への制裁や適性評価不合格者への不利益取り扱いを止める規定はない。不服申し立てを扱う機関も考えられていない。

 適性評価に際しては「内閣総理大臣に対し、必要な資料を添えて、適性評価調査を行うよう求める」(同条4項)とする。内閣総理大臣を長とする秘密調査機関=スパイ組織が創設されることになる。国家が膨大な市民の情報を収集する監視社会が形成され、ジョージ・オーウェルの『1984』が現実のものとなる。

 法案の狙いについて金子さんは「適性評価の導入で日本の軍事企業が外国の軍事企業と武器の共同研究・開発を行えるようになる。外国政府の軍事部門の入札にも参加できる。国家が企業や大学に軍事情報を提供し、軍事研究を促進する。アメリカの反中国経済同盟への参加、軍需産業の強大化、軍事経済の確立が可能となる」と指摘した。

 海渡さんは、生物兵器の製造に転用可能な「噴霧乾燥機」を不正輸出したとして会社の代表者らが逮捕・起訴された「大川原化工機事件」(本紙1806号8面参照)の経過をたどり、「経済安全保障の名の下に3人が長期拘留され、ひとりが亡くなる深刻な冤罪(えんざい)が起きたことを忘れてはならない」と強調。法案は「経済安保分野への秘密保護法の拡大。政府に都合の悪い情報を隠蔽し、知る権利を侵害する。秘密の範囲はあいまい、処罰範囲も広く、冤罪の温床に。軍産学共同の軍事国家化が進み、戦争する国づくりの総仕上げとなる」と警鐘を鳴らした。
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