2024年03月29日 1815号

【みるよむ(689)2024年3月16日配信/カルバラ、ナジャフで広がる/イスラム教の名による自由の抑圧】

 イラクでは、イスラム教の「聖地の神聖性を守る」との名目で、他の宗教行事や自由な文化活動への弾圧が強まっている。2024年1月、サナテレビはこの問題に焦点を当てた。

 映像の冒頭、カルバラ州の知事がまくしたてる。「クリスマスツリーの周りに集まり、踊ったり音楽を演奏したら、1か月間身柄を拘束する」

 モスクの指導者は「カルバラを淫蕩(いんとう)と売春の町に変えようとしている。あなた方は毎日踊っているからだ」と説教する。イスラム教以外の宗教的行事、歌や踊りを激しく攻撃し、弾圧すると宣言する。

 カルバラの町で掲示された標語には「街頭や住宅街で放送局のDJを通じてわいせつな歌を放送する者」「店頭に女性の衣服を陳列すること」は「法律で罰される」と書かれている。

 例年行なわれていたクリスマス、新年、バレンタインデーなどの行事は、カルバラ州知事の命令で一切禁止。街頭を飾っていた大きなクリスマスツリーはなぎ倒された。「ベールを脱いだホステスがDJで出演し、カルバラ州の神聖を犯している」という理由でレストランが閉鎖された。

バレンタインデーも禁止

 もう一つのシーア派の聖地ナジャフでも、バレンタインデーが禁止され、花の販売までも禁止されている。

 女性チームが結成され、「不謹慎な女性に責任を取らせるため」に町を歩き回り、摘発する。男性も、イラク社会の習慣と伝統に反するとして夏に短パンをはくことまで禁止なのだ。

 シーア派イスラム政治勢力が力を持つ現在のイラク政府は、宗教支配を強めている。それは、石油をはじめとした利権を握り汚職を横行させているグローバル資本と政治家への市民の怒りを抑え込むために利用されている。サナテレビは宗教による不当な支配に反対しようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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