2024年03月29日 1815号

【避難者の住まいを奪う暴挙/福島県が強制執行申し立て】

 3月8日、原発事故で福島から避難し東京・江東区の国家公務員宿舎に住んでいる避難者宅に、いきなり東京地方裁判所の執行官6人が訪れ、「原告の福島県が明け渡しの強制執行の申し立てをしたから、1か月以内に荷物をまとめて出て行くように。さもなければ強制執行する」と宣告した。

 しかし、福島県が2020年、国家公務員宿舎からの退去を求め提訴した裁判は終わっていない。現在、最高裁に上告手続き中だ。

 避難者は、県が17年3月に住宅無償提供を打ち切った後も、行き場を失ない住み続けざるを得なかった母子避難世帯。非正規で働き、「公営住宅(有償)なら何とか生活していける」と都営住宅入居を求めたが、費用負担が無理な民間賃貸住宅しか紹介されなかった。

 区域外避難者(「自主避難」者)は日本政府も認めた国際人権法上の「国内避難民」だが、提訴は国際人権法が保障する居住権を侵害するものだった。22年秋、国連人権理事会から派遣され来日したヒメネス=ダマリー特別報告者は、この提訴について「賛成できない。避難者への人権侵害になりかねない」と異例のコメントを出し、警鐘を鳴らしている。

 近年、最高裁も国際人権法に敏感とならざるをえず、この裁判も国際法に基づき逆転する可能性がある。強制執行は、裁判の争点を力づくで抑え、まともな審理から逃げるものであり、到底許すことはできない。

 国際人権法は、「国内避難民」に明け渡しを求めるためには「代替措置の誠実な提供」を条件にしている。国際基準に従って、福島県は今すぐ強制執行の申し立てを取り下げ、現状を真摯にヒアリングし、「代替措置の誠実な提供」がどうすれば可能か、検討すべきだ。

 住宅追い出しを許さない会は「ストップ!強制執行」オンライン署名を呼びかけている。

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