2024年04月19日 1818号

【みるよむ(692)2024年4月6日配信/イラクで相次ぐ病院の火災/安全対策の欠如を覆い隠す政府】

 イラクでは大病院の火災が続き犠牲者が出ているが、政府は真剣な対策を取らず責任逃れに終始している。2024年1月、サナテレビはこの問題を取り上げた。

 サナテレビのレポーターによると、大きな病院の火災が数か月に1度の割合で相次いでいるという。ところが、政府当局はまともな防火対策を取っていない。実際に事故や火災に対処する市民防衛隊は、「炎が病院を包むのを立ち尽くして見ていた」という状況だ。

 ディワニヤ病院では新生児室で火災が発生した。この火事で子どもが4人死亡し、250人が避難した。赤ん坊を焼死させるというこの痛ましい事故は、火災の防止や安全対策を怠ったことによる人災だ。

 政府は、保健相が病院を視察し、スダーニ首相が事件の状況を解明すると発表しただけだ。全く形だけの対応だが、この火災はそれにとどまらなかった。

 当局の科学調査報告書は「出火原因は電気回路のショートで、近くの廃棄物の山から出火した」とした。ところが、治安当局はディワニヤ病院に放火したとして4人を逮捕したのだ。全員15歳以下の少年という。

冤罪で責任逃れ?

 出火の原因が電気回路のショートと放火では全く話が変わってくる。レポーターは、政府当局の捜査がこのように矛盾だらけなのは「真実をあいまいにし、世論を黙らせることが目的だ」と指摘する。政府当局は、安全管理の失態が引き起こした火災について、責任逃れのために「放火」という冤罪(えんざい)をつくり上げている可能性があることを番組は強く示唆している。

 イラク政府は、市民の命と健康を守る医療サービスを削ってきた。今や病院の火災防止対策もまともに行わず、命を失う事態まで起きている。サナテレビはこうした実態を明らかにし、公的医療の再生と強化を要求しようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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