2024年05月31日 1823号

【みるよむ (697)/2024年5月11日配信/イラクで急速に広がるエイズ(後天性免疫不全症候群)】

 イラクでは今、エイズ(後天性免疫不全症候群)が急速に広がっている。その原因は何か。2024年3月、サナテレビはこの問題を取り上げた。

 イラクでエイズが急速に広がったのは2003年の米軍占領以後のことだ。占領以来、イラクでは公的医療サービスが崩壊させられてきた。美容センターなどに対する保健所など公的機関による衛生の監督も十分に行われていない。その結果の一つがエイズの蔓延(まんえん)であると言えるだろう。

 占領後の大量失業、格差拡大のもとで、売春が広がった。保健省のスポークスマンは、バグダッドで「2千人以上がエイズに感染し、うち7人は子どもだ」と述べた。それは売春宿が広く存在するためだ。

 サナテレビは、バクダッドのカディミヤ地区や、ナジャフ州、カルバラ州などの売春の実態を挙げる。これらは「いわゆる一時的な(仮の)結婚≠ェある宗教地域」だ。その「一時的な結婚」は売春の温床となり、少女たちがセックスを強制されている。

 こうした状況では、エイズだけでなく、多くの深刻な性病が引き起こされることは間違いない。

治療体制確立も放棄

 エイズ治療についても大きな問題がある。「エイズ患者は適切な治療を受けられず、イラク国外から闇市場で薬を購入しなければならない」という状態だ。しかも、治療のために指定された場所も保健所の監督もない。これではエイズ感染が広がるのも当然だ。

 エイズには有効な治療法と薬があり、十分な検査体制と予防教育があれば感染拡大は防げる。ところが政府はまともな対策を取らず、放棄している。エイズの蔓延はイラク社会の問題が引き起こしている。

 サナテレビは社会変革の闘いで公的医療体制を再建し、エイズの被害をなくそうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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