2024年05月31日 1823号
【読書室/マイナンバーから改憲へ 国会で50年間どう議論されたか/大塚英志著 白澤社発行 現代書館発売 1300円(税込1430円)/民主主義と人権の問題だ】
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そもそもマイナンバー制度は何を目的にしているのか。マイナンバーカードの運用上の問題や矛盾は明らかにされてきたものの、本来の目的を巡る議論は多くない。本書は、マイナンバーの目的に迫るものだ。
個人に番号をふることは権力の行使である。マイナンバーカードの発行者は地方自治体となっているが、システム運営は国が主導している。この関係に地方自治のあり方や行く末が内包され、国と個人の関係が番号による管理のもとに置かれることを意味する。こんな社会を受け入れていいのか、と著者は問いかける。
マイナンバー構想はいつから始まったのか。1968年に「訪米MIS(経営情報管理システム)使節団」が提言を行った。使節団は各分野のトップ企業、通産省(当時)、マスコミから構成されており、狙いは企業の経営効率化と労働者管理を求めることにあった。独占資本の要請であった提言が、国家運営と行政のモデルに援用されていく。マイナンバーはここから始まった、と著者は述べる。
本書は、マイナンバーの国会審議を分析する。それぞれ貴重な指摘がある。その一つが、何の論議もなかった日米デジタル貿易協定であり、個人情報をGAFAに差し出したことだ。
政府や資本がマイナンバーの先に描く社会が「スーパーシティ」。候補地とされたのが大阪市だ。大阪万博はそのモデルとの警鐘は重要である。
著者は、マイナンバーを考えるとは憲法を考えることと結論する。人権や社会参加の手段としての民主主義をどう考えるか、政治に対する主権者とは、人とは何かとの問いを復権させることを強調する。 (I) |
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