2025年05月02日 1869号
【たんぽぽのように(36)/尹大統領罷免、その後/6・3大統領選で平等と連帯の社会へ/李真革】
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2025年4月4日、金曜日、ソウル市鍾路(チョンノ)区にある憲法裁判所で、憲法裁判官8人の全員一致で「12・3内乱事態」の首魁である尹錫悦(ユンソンニョル)に対する罷免決定が下された。 「12・3非常戒厳」から122日、弾劾訴追議決書の受付から111日ぶりのことだ。遅すぎる決定だったが、民主主義、国民主権、法治主義など民主共和国の基本原則を再確認したという点で、その決定は大きな意味がある。
大統領選と進歩勢力
憲法と公職選挙法により60日以内に大統領選挙が行われる。6月3日選挙日へ、韓国社会は本格的な大統領選挙局面に入った。「共に民主党」候補が当選する可能性が非常に高い状況だが、二大政党とは少し違う進歩勢力の声も聞こえてくる。
進歩党の大統領候補選出での争点は、独自候補として選挙を戦うのか、政権交代のために民主憲政守護勢力の連帯連合を成しとげるのか、だった。結果、民主勢力の連合を主張する候補が圧倒的な票差で当選した。これで進歩党は今回の大統領選挙で再び民主党を支持することになりそうだ。
一方、民主労働党の後身である労働党と正義党、そして緑の党、労働者階級政党推進委員会、民主労総の産別労組、女性・障害者・青少年・貧民・人権・環境・宗教団体などは「社会大転換連帯会議」を作り、大統領選挙で連帯闘争を繰り広げる。候補者選挙を経て今月末に候補を決定する。労働者・民衆が主体となり体制転換をめざす政治を作るため、中途撤退なしに大統領選挙を最後まで戦い完走すると明らかにした。
現在、韓国社会で進歩政党を自任する二つの中心勢力、進歩党と正義党のまったく異なる動きは興味深い。
ヘイトと右傾化
一方、4月17日夜、「尹錫悦アゲイン(AGAIN)」を叫ぶ極右の若者たちが、中華料理屋が多く集まっているソウルのある地域で「中国に帰れ」などヘイトスピーチをしながら行進し、従業員と衝突する事件が起きた。
「12・3内乱事態」以後、韓国内で「中国嫌悪」感情が高まっている中、中国人と韓国・朝鮮系中国人の集中地域で極右デモ隊が住民に暴力を行使する状況にまで至った。
他人の存在そのものを嫌悪することを「表現の自由」の名で容認してきた結果、性的少数者を嫌悪し、障害者を嫌悪し、移住労働者を嫌悪し、中国人を嫌悪する社会が作られてしまった。民主党、「国民の力」の巨大両党が、保守キリスト教勢力の反対を抑えず、「差別禁止法」の制定を18年間遅らせている結果でもある。
では韓国の若い世代の男性の右傾化と嫌悪感情はどのように作られたのだろうか。独裁政権との闘いを通じて政治的民主化を成し遂げ富と権力まで握るようになった世代とは異なり、非正規で雇用不安に苦しめられた世代だ。彼らの怒りは弱者に向けた嫌悪と排除、暴力につながった。2013年、大阪・鶴橋駅前で私が見た風景に、2025年4月、ソウル・建大入口(コンデイック)駅前で再び向き合うことになったのだ。こうした若い世代の右傾化は、日本とも類似している。
1987年体制を越えて
いま我々の課題はより明確になった。
他人を排除し、市民権と公共性を切り縮めるヘイトスピーチと暴力を抑止しなければならない。「12・3内乱事態」以後、真冬を広場と街で過ごしながら守ってきた民主主義は、ヘイト発言の自由≠ニは何の関係もなく、むしろその反対に立っているからだ。
今回の大統領選挙は、韓国社会が直面している様々な危機(不平等、嫌悪攻撃、気候危機、戦争など)を解決するための公論の場にならなければならない。大統領選を通じて、平等と連帯、平和という価値が保障される社会=「1987年体制」をのり越える新しい民主共和国の政治体制を実現しようと努めるべきである。
それはまた、我々にとってのチャンスなのだ。(筆者は市民活動家、京都在住)

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