2025年06月13日 1874号
【1874号主張/反原発 司法をただす全国的意義/6・16最高裁ヒューマンチェーンへ】
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「国に責任なし」の無法
福島からの原発事故避難者などが国・東京電力を相手取り、損害賠償や原状回復を求めた民事訴訟の上告審で、2022年6月17日、最高裁第二小法廷は、長期評価に基づく対策を講じても事故は不可避だったとして、東電に対する規制権限を行使しなかった国の責任を否定した。
それから3年。全国の地裁、高裁すべてで最高裁判決をコピーしたような「国に責任なし」の判決が続いている(地裁5、高裁9)。
加えて、今年3月5日、最高裁は東電刑事裁判で上告を棄却し、旧経営陣の無罪を確定させた。「あれだけの大事故を起こしたのに誰も責任をとらないのか」と、被害者や運動団体から怒りの声が上がった。6月6日予定の東電株主代表訴訟控訴審判決で、仮に、13兆円の支払いを命じた東京地裁判決が覆るようなことにでもなれば、福島原発事故の直接的加害者・東電すら免罪されてしまう。
国策支える最高裁
今、原発推進という国策を支える最高裁判決が全国の原発再稼働に拍車をかけている。2024年11月の女川(おながわ)原発(東北電力)、12月の島根原発(中国電力)に続き、今秋にも柏崎刈羽原発(東京電力)の再稼働が狙われている。もし26年末東海第二原発(日本原電)、27年泊(とまり)原発(北海道電力)と続けば、福島原発事故以前に戻りかねない。
各地の差し止め訴訟も「原子力規制委の新基準を満たしたもの」「具体的な危険性が証明されていない」との理由ですべて請求が棄却され、再稼働推進に歯止めがかからない。九州電力は原発新設の検討さえ明らかにしている。福島原発事故などなかったかのようだ。
司法の崩壊を許すな
国策追随の司法の劣化は深刻だ。背景に、産業界弁護に携わる大手法律事務所関連の弁護士が内閣の人事コントロールで最高裁判事となるなど、政財界と司法の癒着構造が存在する。
司法が「国策」推進を支えているのは原発だけではない。名護市辺野古の新基地建設の軟弱地盤改良工事をめぐり、沖縄県が国土交通大臣による決定の取り消しを求めた裁判で、今年1月16日に最高裁は県の上告を退ける決定をした。「都道府県が訴えを起こす資格はない」などという問答無用の判決が確定された。
日本の司法は人権や環境の最後の砦としての体をなさなくなっている。この情勢で、6月16日の最高裁共同行動の意義はきわめて大きい。共同行動実行委員会には、原発事故の国の責任を明確にさせ人権の最後の砦であるべき司法の独立を運動の力で勝ち取るという一点で、反原発、反公害、命と暮らしを守る市民団体・訴訟団が幅広く結集している。最高裁を包囲するヒューマンチェーンを成功させよう。
(6月1日) |
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