2025年06月13日 1874号
【イスラエル「物資配給所」付近を攻撃/ネタニヤフ政権に制裁を 日本政府は動け】
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イスラエルがガザ地区に大規模攻撃を仕掛けてから600日を超えた。最悪の事態がさらに深刻化している。ガザ地区での飢餓状態、ヨルダン川西岸での入植地拡大―この無法ぶりに親イスラエル国政府も非難の声を上げ始めた。今、各国政府に実効あるイスラエル制裁を取らせることが問われている。
「ガザ人道財団」のワナ
ネタニヤフ政権は米国の「一時停戦」案受け入れを表明、後はハマス次第と報道された(5/29)。虐殺を止め、飢餓状態にあるガザへ支援物資を一刻も早く届けなければならない。停戦は即時実行すべきだ。
だが、ネタニヤフが受け入れたのは、米国特使ウィトコフがハマスとの合意案を大幅に修正したものだった。最も重大な点は、停戦の維持と援助の継続を米国トランプ大統領が保証する項目を削除したことだ(5/31DropSiteNews)。停戦の保証を米国はしない。イスラエルはこれまで通りに振る舞うことを意味している。
イスラエルは攻撃の手を緩めていない。3月2日以来、ガザへの物資搬入を認めず、飢餓状態を作り出した。国連機関を排除し、米民間軍事会社を使い「ガザ人道財団」の名で「援助」を行なった。極めてわずかな量で、配給場所は北部と南部の2か所。住民同士で「奪い合い」をさせ、「秩序維持」と称し発砲、殺害さえしている。ガザ当局は「死のワナだ」と非難した。
ガザ地区の8割近くはイスラエル軍が破壊、制圧。住民が「居住」できる地域は2割ほどになっている。西岸地区での入植者による負傷者は月平均44人。20年間で最悪の割合だ。
ネタニヤフは「自発的移住」を強要し、パレスチナ抹殺の軍事作戦を拡大しているのだ。

イスラエル国内も反発
ネタニヤフ政権の蛮行を批判する声は、イスラエル国内でも高まっている。「これは政権維持を最終目的とする政府の政策であり、われわれを破滅へと導いている」(元イスラエル国防相ヤアロン)。「正気を取り戻さなければ、かつての南アフリカのように、国際社会から孤立する」(元イスラエル軍副司令官ゴラン)。軍高官経験者の発言はイスラエル社会の変化を反映している。
ユダヤ系とパレスチナ系のイスラエル市民団体「スタンディング・トゥゲザー(共に立つ)」は5月19日、爆殺された乳児の写真を掲げ「ガザでの惨状を止めろ」と抗議行動を行った。他の団体とともに呼びかけた23日、参加者は1000人と倍になった。テルアビブからガザの境界まで3日間の抗議デモなど、行動は拡大している。
同団体のリーダーは「国内で目覚めが起きていることは明らかだと思う。立場を明確にする人がどんどん増えている」と語っている。イスラエルのテレビ局チャンネル12の世論調査によれば、61%が戦争終結と人質帰還を望み、戦闘拡大・ガザ占領を支持するのは25%に過ぎない。
口先だけでない措置を
イスラエルの国際的な孤立を示す動きが出始めた。
ドイツのメルツ首相は「ガザ攻撃はもはやハマスとの戦いとして正当化されない。何の理屈も通らない」と乳児などを殺害するイスラエルの軍事行動を非難した(5/26ロイター)。ドイツはユダヤ人虐殺の歴史から反ユダヤ主義を徹底して取り締まってきた。イスラエル批判は反ユダヤ主義として弾圧された。それを首相が口にしたのだ。
イスラエルを支えてきた英国政府もカナダ政府と共に、軍事作戦の停止、人道支援の制限解除を求める共同声明を発した(5/19)。ヨルダン川西岸での入植地拡大も批判。「制裁を含む、さらなる措置をとる」と警告した。
英国はイスラエルとの自由貿易協定の交渉を停止し、EUも政治・経済関係を規定する連合協定を見直す。「加盟国の大多数が25年前の協定見直しを支持している」(カラス外務・安全保障政策上級代表)
欧州・アラブの約20か国が会議を開き、主催国スペインは「攻撃停止と停戦に向けたイスラエル制裁」を呼びかけた。あわせて、武器禁輸、2国家解決を認めない個人(ネタニヤフなど)への制裁も要請した。パレスチナ国家の承認、「2国家解決」推進をめざす国連のハイレベル国際会議(6/17〜20)も招集される。
問題は、各国政府のイスラエル批判を実効性のある措置に具体化させることだ。
日本政府は「深刻な人道状況がさらに悪化している」とイスラエルの軍事行動を非難したが、それだけだ。具体的な制裁措置はまったく検討すらしない。パレスチナ国家の承認もしない。
UWFPP(パレスチナ人民防衛統一労働者戦線)のアピール(別掲)に応え、日本政府にも武器禁輸など具体的な措置を取らせることに全力をあげよう。パレスチナ人民に連帯する上で、いま最も必要なことだ。

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