2025年06月13日 1874号

【学術会議解体法案 重大局面/野党は採決に応じるな/坂井担当相は辞任せよ】

 2年前、著者が明らかにした巨大法律事務所を介した政府・東京電力・最高裁の癒着の構造は、原発関係の裁判を闘う原告・弁護士・支援者に衝撃を与えた。「国に原発事故の責任なし」という6・17最高裁判決の背景を暴いていたからだ。

 本書は、その後の調査で明らかになった事実や当事者へのインタビュー、最高裁をめぐる市民側の動きなどを載せたものだ。

 原発賠償訴訟では6・17判決以降、高裁地裁を問わず同判決のコピペ判決が続いている。最高裁に上告したら、係属が決まった第一小法廷には控訴審から東電の代理人を務めたTMI総合法律事務所(巨大法律事務所の1つ)出身の宮川美津子判事がいるという「だまっちゃおれん愛知岐阜訴訟」のようなケースもある。最高裁が常々下級審に対して強調してきたとされる「公正らしさ」すら疑われる事態が生まれている。

 また、国の代理人(訟務検事)を務めていた人物が、裁判官に戻って国を相手取った裁判を担当するという判検交流(判事と検事の交流)の弊害も取り上げられている。

 本書は、一方で、昨年6月17日に行なわれた最高裁包囲行動など市民側の反撃や、最高裁で原告勝訴をかちとっている建設アスベスト訴訟、当初の形勢不利を跳ね返し原告勝訴を積み重ねている「いのちのとりで」裁判(生活保護費引き下げの取り消しを請求)についても紹介する。

 現在の司法の劣化を招いた一因が個々の裁判官の姿勢にあるのはもちろんだが、著者は、裁判官が権力に忖度(そんたく)せず良心と憲法に基づく判決を出せる環境を市民社会が作っていかねばならないと呼びかけている。(U)
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