2025年07月04日 1877号

【原発事故の責任は誰が負うのか/私たちが裁くと1200人最高裁ヒューマンチェーン】

 梅雨を通り越し、もう夏がきてしまったような猛暑の6月16日、東京。全国各地から最高裁前に集結した人びとは、バナ―や幟(のぼり)を持ち続け、コールでは拳を突き上げ、したたる汗を拭う手が休まることはない。

 最高裁が「福島第一原発事故に国の責任なし」との判決を出した2022年6月17日から3年。昨年に続き最高裁を包囲した1200人以上のヒューマンチェーンは、「原発事故は国の責任」「被害者救済どこ行った」「司法の独立はどこいった」と最高裁に怒りのコールをぶつけた。

 その判決を言い渡した裁判長は、東京電力側の代理人を務める弁護士事務所に天下るなど、「人事交流」が盛んに行われる。司法の独立、公平中立はどこへ?

 「国に責任なし」判決から原発事故に関する訴訟は「連敗」が続く。6月6日の東電株主代表訴訟控訴審判決は、旧経営陣に賠償を命じた一審判決を覆し、「責任なし」とした。原発事故の責任が国や東電にないなら、誰が負うのか。

 司法を弾劾する文言を大書したバナーやプラカードが最高裁を囲んだ。原発事故の賠償を求める訴訟団、原発運転差止訴訟を起こした団体、公害訴訟団などのスピーチでは「三権分立は崩壊し三権連立になっている」「恥ずかしくないのか」と厳しい言葉が重ねられていく。そのたびに拍手が鳴り響き「そうだ」と連帯の合いの手が入る。

 参加者の感想は「司法の自殺行為」「法の信頼性、正当性がまったくない」「こんな司法は叩き潰して、新たな司法をつくろう」と皆が憤りを露わにする。あなたたちが裁けないなら、私たちが裁こう≠ニ言っているようだ。

 司法のあり方を問うとともに、「原発ゼロ」を目指す圧倒的世論の必要性がアピールされた。東海第2原発に事故が起これば、首都圏に被害が及ぶ。

 「宗教者が核燃料サイクル事業廃止を求める裁判」の原告代表内藤新吾さんは「電力供給において、原発は高くつくのに安いと思っている人が多い。原発は公害」と原発の「誤解」を訂正していくことを強調した。

 前日行われた東京・神田周辺のデモ行進のアピールは、街頭の人びとの心に刻み込まれたと信じたい。

 「原発賠償訴訟・京都原告団」共同代表の萩原ゆきみさんは「避難の権利を勝ち取って全国に原発の危険性を知らせたい」。さらに、「被爆者が病気にならない、免疫力を高めるなどの発症前の診断、治療も充実してほしい」と国、東電などにすべての市民で求めていくことを訴える。 (Y)




原発避難者の住まいと人権保障を求める交流集会/冷酷な追い出しと闘う

 原発(震災)避難者の住まいと人権保障を求める交流集会が6月16日午後3時から衆院第二議員会館で開催され、100人の会場が参加者で埋まった。最高裁包囲行動から引き続き参加する人も多く見られた。山崎誠(立憲)、岩渕友(共産)、上村英明(れいわ)の各議員が参加した。

 住宅追い出し裁判の世話人を務める熊本美彌子さんが福島県との避難者の住宅裁判の経過報告。区域外避難者への住宅支援が長期にわたって被害が継続することを想定していない災害救助法を根拠に行われたこと、同法が定める期限切れを理由に2倍家賃の請求や、県が原告となった追い出し裁判・強制執行が行われてきた経過について述べた。

 井戸謙一弁護士は、被災者に不利となる「2倍家賃条項」を、多くが高齢者である避難者が判読困難な小さな文字で事前説明もなく契約書に紛れ込ませ、避難者に押印させた実態を告発。県による「卑劣なだまし討ち」であることが参加者に伝わった。

 フランスの事情に詳しい研究者からは、住宅のない市民が、繰り返し排除されても空き家占拠で立ち向かう運動が報告された。「人びとにとって生活すべての基盤となるはずの住まいが商品化されていることが困難の根本にある」

 原発事故区域外避難者にとどまらず貧困層など居住の権利が保障されていないすべての人びとにとって、住まいを「商品」から公共に転換させる運動が重要だ。

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