2025年11月07日 1894号
【ドクター/トランプの大げさな発表と日本のOTC薬問題】
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トランプ米大統領は、ケネディ厚生長官と共に、解熱鎮痛剤アセトアミノフェンを妊婦が飲むと自閉症などが増えるので「妊婦は痛みを耐えるべきだ」と自ら発表しました(9/22)。個別の薬の副作用を伝えるにはたいへん大げさです。ところが、その害はスウェーデンの厳密な研究などでほぼ否定されています。大統領がこんな特別な発表をしたのはなぜでしょうか。
まず、この薬は大変安価で、今回の制限対象は妊婦だけであり、巨大製薬企業の利益を大きく損ないません。はるかに害が重大で、現ケネディ厚生長官が自著で辛辣な批判をしているコロナワクチンなど、批判すべき多数の薬剤は無視です。
ところで、アメリカの医療費は世界一高いのに「妊産婦死亡率、乳児死亡率、慢性疾患や予防可能な疾患の割合、心臓病の発生率は、世界のどの富裕国よりも高い」(DSA〈アメリカ民主主義的社会主義者〉)のです。それは、@3千万人もの無保険者を抱え民間保険会社による高額な医療保険料と医療機関への支払制限A巨大病院企業の医療労働者への厳しい搾取B世界の医療に最も強い影響力を持つグローバル医薬品企業の高利益―のためだ、とDSAは分析しています。
トランプもケネディも、これら医療荒廃の根本原因には全く手をつけず、医薬品医療機器の監視当局FDA(アメリカ食品医薬品局)も使って、安全性の最も高い薬をやり玉に挙げているのです。センセーショナルな声明により医療改革をしているかのイメージを作り、劣悪な医療の根本原因から国民の目を逸らしているとしか思えません。
日本のマスコミ報道も肝心なことを避けています。
妊娠中は、特に、解熱鎮痛にロキソニンやイブフェンなど「抗炎症」作用をもつ薬を使うのは、はるかに危険です。さらに、医師の処方せんがなくても買える他の市販薬(OTC薬)の中には、多くの有害作用を持つものがあります。
今自民・維新などが「医療費削減」と称して、多数のOTC類似薬を医師が保険で処方できなくしようとしています。そうなれば多数の薬剤が、医師ではなく、自分だけの判断で使われ、妊娠など様々な健康状態により危険なことになり、かつ自己負担が増えます。
減らすべきは保険で支払う薬ではありません。多くの有害作用を持つOTC薬を縮小することが市民のためです。(筆者は小児科医) |
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