2025年11月07日 1894号

【みるよむ(749)/2025年9月20日配信/利権争いの場になったイラク最大のバイジ製油所】

 バグダッドの北方200キロにあるイラク最大のバイジ製油所は、イスラム政治勢力の私兵に略奪されたり、軍事攻撃を受けたりしている。また、腐敗した政治家の利権の舞台にされている。2025年7月、サナテレビがこの製油所の現在の問題点を報道した。

 イラクは世界有数の産油国だ。石油収入のおかげで経済自体はそれほど困難な状況ではない。もし、石油の収益が社会に適切に還元されていれば、市民の生活は相当に豊かなはずだ。

 しかし、サナテレビはこの製油所の現実を突きつける。まず、バイジ製油所は「過去数年略奪された設備」が多数あった。政府当局がようやくその盗難品を回収したばかりなのに、今度は「無人機で攻撃された」。

 バイジ製油所ではこんなことがずっと続いている。政府が繰り返し復旧を試みても、事態は変わらない。そして「いまだに製油所は完全には再開していない」という有様である。

 メディアが報道した盗難設備も、実際に失われたり売り飛ばされたもののごく一部にすぎない。

犯罪者と権力の癒着

 このような犯罪行為を行っているのが宗派私兵たちである。その派閥間の利権争いの結果、犯罪行為がまかり通っている。

 過去に製油所の設備略奪で非難された宗派私兵組織アサイブ・アフル・ハクは「現在では資産保護における国家の治安パートナー」だという。犯罪者と政府権力が癒着している。腐敗と暴力支配構造は底知れない。

 現在のイラクでは、グローバル資本と政治家、政府高官、宗派私兵が結びつき利権をむさぼる一方、異なる派閥間の利権争いが激化している。バイジ製油所はその利権の奪い合いの舞台となっている。こうした状況に、サナテレビは、石油から得られる利益を市民のために使えるように政治の民主化を訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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