2025年11月28日 1897号

【ミリタリーウォッチング/小泉防衛相「原潜導入の必要性」に言及/緊張あおる“核戦争”の準備だ】

 アジア・太平洋の米国との「同盟国」が次々と原子力潜水艦(以下、原潜)導入計画を打ち出している。オーストラリア、韓国に続いて日本が名乗りを上げた。

 小泉防衛相は11月6日のテレビ番組で、原潜導入の必要性に言及。これは、9月に発表された「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」(座長・榊原定征経団連名誉会長)報告書の提言「潜水艦の潜航時間を延ばすため、新たな動力の研究を進めるべきだ」を早急に形にしようという発言だ。提言は、武器輸出(「防衛装備移転」)の大幅緩和ー5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海)制限の見直しを求めるなど、野放しの軍拡と軍需産業育成、本格的な軍事国家体制を求める「大軍拡宣言書」である。

 原潜の保有国は現在6か国(米英仏中ロ印)。すべて核兵器保有国で原潜と核兵器が密接な関係にあることがわかる。原潜の保有は核を含む戦争準備に参入することを意味し、「非核三原則」見直しが公然と口にされるのも偶然ではない。

 だが、原潜の保有は「原子力利用は平和の目的に限る」と明記する原子力基本法に反し、長射程ミサイルを積んだ原潜が遠く離れた海まで行くことは政府が建前とする「専守防衛」から明確に逸脱する。まさに原潜保有は「大転換」であり、敵基地攻撃、集団的自衛権に踏み込んだ安倍「安保法制」の実質化に他ならない。

 原潜は現在の海上自衛隊が運用する通常動力(ディーゼル)潜水艦(海自潜水艦戦力は相当能力が高いとの「世界的評価」がある)と比較しても雲泥の差がある。潜航時間は通常動力での場合「数日程度」に対し原潜は数か月(食糧が続く限り)、航続距離は通常動力12000`bが原潜はほぼ無限、速度も通常動力は水中で最高20ノットだが、30ノット以上とされる。

 原潜に長射程ミサイルを積めば、日本海や東シナ海、太平洋に潜りながら広く「敵」の地上拠点まで攻撃することができる。「敵」から見ると、水中に隠れた発射拠点を探して破壊するのはきわめて難しい。

 前出の提言は、さらにVLS(垂直発射システム)を搭載した潜水艦の開発に言及している。VLSとは、潜水艦から垂直にミサイルを発射するシステムで、これにより潜水艦は長射程ミサイルの移動する秘匿(ひとく)基地≠ニして機能する。

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 日本の原潜導入が、核兵器不拡散条約(NPT)体制の脆弱(ぜいじゃく)化にいっそう拍車をかけ、東アジアの大軍拡競争を激化させることは必至である。中国等に対する核を含む攻撃態勢を構築し「戦争も辞さない」と宣言するに等しい。

 阻止≠フ大きな声を広げなければならない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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