2025年11月28日 1897号

【未来への責任(423)/日韓政府共同で遺骨DNA鑑定を】

 私が25歳の時(1988年)、沖縄の故・具志八重さんから「金光教の沖縄戦遺骨収集に参加しないか」と呼びかけられて参加したのが遺骨問題との出会いだった。

 「ひめゆりの塔」西隣エリアにある大小のガマの中を懐中電灯を持って探る。ガマの奥に小さな穴が見つかり、その中から1体まるまる兵士の遺骨が見つかった。衝撃的だった。東広場には多くの遺骨が段ボール箱に入れられ、一番上には頭蓋骨が並べられた。しかし当時はその後焼骨しており、DNA鑑定という発想などなかった。

 2001年提訴の在韓軍人軍属(GUNGUN)裁判の要求の一つは「遺骨を返せ」だった。遺族の思いは日本人も同じで、2016年に制定された「戦没者遺骨収集推進法」は、戦没者遺骨を調査・発掘・収容し、家族に返すことを「国の責務」とする画期的な法律だった。ただ、「我が国」とあったため植民地出身者が排除されるのではとロビー活動を行った。結果、塩崎厚生労働大臣(当時)から「遺族の気持ちは国境に関係なく同じ。朝鮮半島出身者は韓国政府から具体的な提案があれば真摯に受け止め政府部内で適切な対応を検討する」との答弁を引き出した。

 一方、DNA鑑定について厚労省は消極的だった。2014年以降、ガマフヤー・具志堅隆松さんとともに厚労省交渉を重ね、国会議員には国会質問をしてもらい、DNA鑑定や安定同位体比検査に関する基準は先進国であるアメリカDPAA(米国国防総省捕虜・行方不明者調査局)や韓国の水準を無視できないところまでいった。

 また、厚労省は韓国人遺族とのDNA照合を拒否し続けてきたが、9月10日に厚労省が発表した「有識者会議」資料には、コロナ禍でDPAAから日本を経ず韓国に返還されたタラワの遺骨や、1086人の集団埋葬地が見つかったペリリュー島の遺骨など太平洋地域全域の未収容遺骨の状況と方針が記載されていた。230万戦没者のうち2万1千人、1%は朝鮮半島出身者である。ペリリュー島では戦死者1万人中550人、タラワでは戦死者6460人中約1200人が朝鮮半島出身者というものだ。

 その資料を携えて11月上旬訪韓し、韓国国会議員と意見交換した。「覚書」締結の要望書提出が実現した。日韓議員連盟での議題検討や政府への後押しを約束してくれた。これまでの外交交渉の行き詰まりの要因は「安倍談話」の「謝罪を子どもの世代に背負わせてはならない」にあると思った。日本国内での追及がますます必要だ。

 今後、日韓の平和を希求する国境を超えた「人道的」プロジェクトとして日韓政府共同でのDNA鑑定を実現させたい。

(在韓軍人軍属〈GUNGUN〉裁判の要求実現を支援する会 古川雅基)

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