2025年11月28日 1897号
【住まいの権利裁判/福島県の人権侵害を批判/2月に原告11人の尋問】
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住まいの権利裁判は11月12日第16回弁論が開かれ、原告11人中10人目となる意見陳述が行われた。
福島県郡山市から避難した原告のKさん(男性、59歳)は県の人権侵害を批判した。「震災当時は自営業で古物商を営んでいた。自宅は震災で半壊。放射能が心配で戻る気はない。両親も放射能の影響をわかっているが慣れない土地で暮らすことを嫌って福島に残った」
2012年に現在の東雲(しののめ)住宅に住みガードマンなどアルバイト。しかし嫌がらせを受け2019年には仕事を辞めた。転居先を探すため県主催の相談会に出たが、紹介物件は初期費用で40万円必要など、どれも高額な物件ばかりだった。「震災の前はお金を貯めて飲食店をやろうと計画していたが、その後の避難生活で蓄えを失い、できなくなった。未来への希望もなく、不安の大きい生活を強いられた」と振り返る。
そんな時、2020年12月末に郡山の実家に福島県の職員が訪問。親から「お前みたいに中途半端に生きていて、借金作ってんじゃないよ」と怒鳴られた。「許せないのは80代の両親を玄関先に立たせ、寒い中30分ぐらい家賃を支払っていないこと、退去しないことを責め続け、説教したことだ。関係ない親を巻き込んだことに強い憤りと屈辱感を覚えた。このことで親との関係が悪くなった」と語気を強めて訴えた。
弁護団は、内堀県知事や国際人権法の専門家ら4者の証人尋問を申請したが、池田知子裁判長は、原告を除く他の証人を却下した。内堀知事の尋問を通して、行政の裁量逸脱、裁量権乱用の違法性をただす道筋は途絶えた。
一方で、原告全員からの尋問を認めたことで、福島県による人権無視の応対が焦点となった。裁判官は聞くだけ聞いて「問題はない」といった判決文を書くのはかなり無理があるだろう。
報告会で、井戸謙一弁護団長は「被告(福島県)は、住宅打ち切りの際、国の意向、除染の進行、復興住宅建設など考慮して判断とした。しかし、避難者の実態などは『考慮しない』と繰り返した。裁判長は『仮に知事を呼んでも県と同じことを言うだろう』と見たのではないか」と述べた。今後の焦点は、原告の尋問内容が打ち切りの違法性として裁判官に評価されるかどうか、になる。
次回は来年2月16日、次々回は同25日。原告11人の尋問が予定される。
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