2025年12月05日 1898号

【PPSF(パレスチナ人民闘争戦線)モハマド・アローシュさんに聞く/イスラエルは非暴力抵抗を最も恐れている/国家樹立へまず選挙実施】

 イスラエル占領と非暴力で闘うPPSF(パレスチナ人民闘争戦線)のモハマド・アローシュ政治局員が来日し、広島、神奈川、大阪の集会(主催ZENKO〈平和と民主主義をめざす全国交歓会〉)で連帯の強化を訴えた。各会場とも現地の報告に大きな反響があった。改めて、PPSFの闘いについて聞いた(11月16日、まとめは編集部)。


どんな抵抗運動をしているのか

 イスラエルの占領に対する抵抗闘争はいくつかの手段、方法があった。PPSFは、第3次中東戦争(1967年)でイスラエルがパレスチナを占領した時、パレスチナ国内で結成した唯一の政党だ。ヨルダン川西岸地区を中心にいろんな考えの若者が集まった。パレスチナ人が追放されないように武装抵抗もした。占領と闘うインティファーダ(民衆蜂起)も経験した。多くのリーダーが逮捕され、追放された。

 オスロ合意(93年)後、非暴力の闘いに重点を置くようになった。そして今、国際的なパレスチナ支持の広がりなど情勢の変化や現実的な状況を分析し、非暴力による抵抗が最もふさわしい闘い方だと考えている。

 PPSFは結成以来12回の大会を経て、国際的な連帯を広げ、民主主義と社会主義的政策(社会福祉の充実など)の実現を掲げてきた。占領からの解放、アパルトヘイト解体を進めるためには、パレスチナの統一的な闘いが不可欠だ。非暴力の闘いはパレスチナ人が最も望んでいる闘い方だ。

 そしてなにより、イスラエルが最も恐れる闘い方だ。なぜなら、イスラエルのウソが暴かれるからだ。「自国の安全を守るため」という言い訳ができない。パレスチナに対する暴力的支配やアパルトヘイト、ジェノサイドの実態がさらされることになる。

 ネタニヤフ政権は平和を求めていない。オスロ合意にあたったイスラエルのラビン首相が暗殺(95年11月)され、イスラエル国内の平和運動は停滞した。だが、イスラエルの平和を求める人びととも連帯し、ファシスト政権を倒さなければならない。そのためにも、非暴力の闘いが有効だ。

イスラエル・米国の妨害と闘うには

 政治的な抵抗運動を集中的に強化しなければならない。国際法や国連決議を踏まえた解決に向かうことが現実的だ。

 ハマスの10月事件(2023年10月7日のイスラエル攻撃)はネタニヤフを助けた。汚職や司法介入で非難を浴びていたネタニヤフはこれを利用し、「国家の危機」と世界中にウソを広げた。米国も同調した。パレスチナ人はみなテロリストにされた。

 ネタニヤフ政権は、西岸地区で入植者をけしかけている。約70万人の入植者はみな武装し、イスラエル軍に守られて、毎日のようにパレスチナ人の家や車を焼き、土地を奪い、人を殺している。

 1000以上の検問所をつくり、パレスチナの街を分断し、国家として成立できないようにしている。トランプ政権は、パレスチナの首都となる東エルサレムをイスラエルの首都と認めた。今、イスラエル国会には西岸地区をイスラエルに併合する法案まで出されている。これらは、すべて国際法に違反するもので、国連決議にも従わない姿勢だ。

 「二国家解決」を内容とする47年国連決議181号で、イスラエルは建国したがパレスチナは国家ができなかった。今、この決議に従い「二国家解決」を実現することが現実的だと考えているが、ネタニヤフ政権内にはこれを支持する者は一人もいない。

 だが、世界の160か国がパレスチナ国家を承認した。日本政府にも是非加わってほしい。パレスチナ国家を認めることは、世界の平和につながる。

パレスチナ政府を立て直すには

 パレスチナ政府は残念ながら機能していない。その原因は、イスラエルによる経済封鎖や国連の支援がないこと、なによりイスラエルによる占領が主要な原因だ。

 PPSFは政府改革のビジョンを持っている。

 まずは、大統領選挙を実施することだ。人びとが自由に代表者を選び、民主主義を実現する。欧米諸国はパレスチナ政府の「汚職」疑惑を広めているが、パレスチナ政府に圧力をかけ介入の機会を狙っているのだ。02〜04年、当時のアラファト大統領にも条件付きの支援、シナリオを押し付けた。今回もそうだ。われわれは外国の介入、押しつけは断固拒否する。

 治安や教育、法体系など改善すべきことは多いが、それはパレスチナ人が決定し、実行することだ。今、パレスチナ憲法を起草しており、ほぼ完成している。PPSFのマジュダラニ委員長が中心的役割を果たしている。

 労働省、農林省といった政府機関を担う必要がある。そのためにも、政治セミナーを開催したり、青年・スポーツ活動の促進、入植者から市民を守る保安隊の組織化などに注力している。PPSFは14ある労働組合のうち10組合で選挙に勝利している。女性組合の選挙にも候補者を出す。そのための会議には800人の女性メンバーが集まった。

 パレスチナ国民を代表する国家の樹立、ガザ復興を実現するためにも、党メンバーの育成に尽力している。労働者や青年、女性団体の活動を支援している。「未来の人たち100人」プロジェクトとして人材の育成にすぐにも取り組む予定だ。各地域に支部を建設し、13回目の大会準備をしている。

独立国家樹立への課題は何か

 完全に停戦が実現すれば、1年以内に選挙を行う。パレスチナは、96年、06年に選挙を経験している。周辺国に比べても民主主義の経験はある。だが今、パレスチナ人にとって、選挙が最優先ではないことも事実だ。ガザでは、2年間にわたる攻撃で離散した家族が再会することが先だ。

 イスラエルは東エルサレムでの選挙を認めない。だが、この地域を抜きに選挙は成り立たない。国際的な圧力が必要だ。有権者の登録も再確認しなければならない。西岸でも、難民キャンプが破壊され、再び難民となった人びとがどこで暮らすことができるのか。一時的な住所でしかないのか。解決すべき課題は大きい。

 だが、選挙実施にむけ準備を続けている。PLO(パレスチナ解放機構)でも選挙のルールを定め、それを認めるすべての政党が参加する選挙を実施する。1つの政府をつくり、1つの制度の下に1つの抵抗運動を続けていく。10月事件を繰り返さないよう、政府以外の武器は回収される。

 80年間も続いた占領を終わらせたい。犠牲者をなくしたい。パレスチナの子どもにも生きる権利がある。手足を切断した子どもや親を亡くした子どもたちに、医療や教育を保証したい。

 イスラエル人もパレスチナ人も平和に暮らしてほしい。200万人のパレスチナ人がイスラエル国内で生きている。国会議員も出している。アパルトヘイトを廃止した南アフリカのように、われわれも必ず勝利する。

 パレスチナ問題が公正に解決されれば、世界の平和につながる。引き続く連帯を。

―ありがとうございました。

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