2025年12月05日 1898号
【「アベノミクス」失敗の反省なし/円安・物価高を深刻化させる高市「経済政策」/必要なのは賃上げ、消費税減税だ】
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高市首相は「世界の真ん中で咲き誇る日本」など安倍元首相の継承を看板とし、危険な「台湾有事」での集団的自衛権容認発言にも固執している。その危うさは経済政策にも表れている。
軍需産業強化で経済成長
高市は「今の暮らしや未来への不安を希望に変えるためにも、『強い経済』を」「『責任ある積極財政』の考え方の下、戦略的に財政出動を」と強調する(11/4第1回日本成長戦略本部)。
そして、経済対策の3本柱に「生活の安全保障・物価高への対応」「危機管理投資・成長投資による『強い経済』の実現」「防衛力と外交力の強化」を掲げる。
以上から見えるのは、安倍が「強い経済」のフレーズを好み「アベノミクス」の名で積極財政を唱えたことを継承し、その失敗を全く顧みないことである。
高市政権の経済対策を端的にまとめると、インフレを気にかけることなくバラマキ=iお米券など)を行い、軍需産業の強化による経済成長をめざし、そのためには国債の乱発もいとわない―というものだ。
アベノミクスの失敗
ベッセント米財務長官が、10月の来日時に「単なるリフレ政策ではなく、インフレ懸念とのバランスを取る政策へと変容すべき」とアベノミクスを踏襲しようとする高市政権の経済政策を間接的に批判した。リフレ政策とは、金利引き下げ等で大量のお金を供給するなど積極的な金融緩和を行って景気の回復を図り、緩やかなインフレ(物価上昇)≠起こすことだ。アベノミクスは、「2年で2%の物価上昇」をうたって累積960兆円の国債を日銀に購入させ、市中に大量のお金を流した。
このアベノミクスの失敗は国際的にも認知されている。IMF(国際通貨基金)はすでに2016年時点で失敗を指摘し「改善の方策」を提言していた。アベノミクスでは景気回復ができなかったからだ。また、円安の急速な進行やそれによる物価高騰を引き起こし、緩やかどころか生活を圧迫するインフレ状態を生んだ。この失敗の総括を抜きに、今後の経済政策を立てることはできない。
高市の言う「責任ある積極財政」とは何か。「責任ある」の意味について高市政権の応援団は、経済成長と財政に責任を併せ持つものと説明する。その実態は「積極財政」で基礎的財政収支が赤字になるため無責任との批判を避けるもので、エコノミストらは「金融市場のリフレ期待が暴走することを回避する」ための歯止めだろうと指摘する。
ところが、現実には積極財政への期待≠ゥら「『もっと増額を』大合唱」が与党から起こり(11/14朝日)、高市政権は総額21・3兆円(「防衛・外交」1・7兆円も含む)の大幅な経済対策費を決定した。一般に物価上昇を生む、需要が供給を上回っている現状(需要と供給の差を示す需給ギャップが4〜6月期で0・3%のプラス、年換算で2兆円ほどの需要超過)では、この財政出動が需要を呼び起こしインフレをいっそう高めかねない。
インフレ 物価高抑制へ
円安による輸入原材料価格の上昇がインフレの大きな要因の一つだ。輸入物価指数(24年度)は石油・石炭・天然ガスが20年比で約1・76倍、飲食料品・食料用農産物も1・33倍となっており、そのために物価が高騰している。


高市政権の「強い経済」「責任ある積極財政」が実行されると、現在の円安、インフレは止まらず物価高が続く。だから、インフレを抑える方策として円安を止め改善することが必要となる。そのためには、アベノミクスのような「異次元の金融緩和」ではなく、金利引き上げなど金融政策を本来とるべき適正なものにしていくことが求められる。もちろん、その結果が中小零細企業や労働者に犠牲転嫁されないための政策を同時に進めなければならない。
加えて、市民・労働者が今でも深刻な物価高に対応できる状態を緊急につくる必要がある。そのために、賃上げと年金引き上げ、消費税減税―廃止で収入増を実現することが必要だ。
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