2025年12月05日 1898号

【哲学世間話/二つの反グローバリズム】

 参政党はその本質からすれば、たしかに極右排外主義政党である。だが、先の参院選比例区で参政党に投票した約743万人もの人すべてが極右排外主義者であるはずがない。では、この極右政党はなぜかくも膨大な票を獲得できたのか。このことは熟考に値する。

 この現象は、近年、欧州各国でさまざまな右翼政党が各種議会やEU議会で顕著な「躍進」を続けている現象と軌を一にし、「躍進」の要因も共通している。

 共通性は、内外の右翼諸政党が排外主義的主張の裏側で「反グローバリズム」を掲げている点にある。

 欧州各国で長い間政権を担ってきた中道右派と中道左派、あるいは両者の連立政権は、グローバル資本の利益を最優先し、その打撃を受けた中間市民層の生活悪化、困窮化に十分な対策を打ってこなかった。

 その結果、蓄積された広範な不満が、既成の支配的政治勢力への大批判となり、「反グローバリズム」「自国優先」を唱える極右政党になびいたのである。

 日本の場合も事情は同じである。参政党の神谷代表が、11月13日の参議院予算委員会でこう述べているのを看過してはならない。

 「グローバリズムというのは、情報や交通の発達により、多国籍の企業がどんどん力をつけて、富・権力が一部の大企業や富裕層、ロビイストといったグローバルエリートと言われるような人たちに集中してしまい、そういった人たちが市場やルールを作って世界を大きく動かしていく行為や思想のことを言います」

 そして彼は「行き過ぎたグローバリズム」の「マイナス面」をさまざまに列挙している。曰(いわ)く「労働者の賃金が変わらない」のに「株主の配当が10倍」になって、「経済格差」が拡大している。「消費税」を上げながら、「グローバルな競争」のために「法人税」を下げている―等々。

 743万票の最大の源泉は、グローバル資本主義のもたらした生活悪化に対する不満、批判にあり、参政党はその不満、批判を巧みに組織した。だが、差別的排外主義で生活悪化や格差拡大にストップがかけられるわけではない。

 この口先だけの「反グローバリズム」に対抗して、左翼は市民・労働者の不満と批判を真の「反グローバリズム」のもとに結集させなければならない。ニューヨークでのその実践例を世界各地に広げなければならない。(筆者は元大学教員)
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