2025年12月12日 1899号
【超タカ派高市政権の本領発揮/安倍「戦争国家」のバージョンアップへ意欲】
|
就任1か月余。「存立危機事態」答弁で「本性を現した」と評される高市早苗首相。超タカ派政権の本領はこれから発揮される。安倍政権が生み出した「戦争する国」、それを大きく育てようというのである。まずは軍事戦略の基本方針である国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の安保関連(軍事)3文書の改定。来年末をめどに重大な変更を狙っている。
真っ先に「死の商人」
自民党安全保障調査会は来春までに3文書の改定案を取りまとめるとするが、「武器輸出三原則」の見直しは「年内にもできる」と入れ込む(11/20)。連立した日本維新の会と「2026年通常国会で撤廃」を合意しているためでもある。
第2次安倍政権はほぼ全面禁止(1983年以後例外が拡大)だった「武器輸出三原則」を「防衛装備移転三原則」と言い換え、「禁止原則」を大転換した。高市政権は、この時の限定5類型(救難・輸送・警戒・監視・掃海)の制約を撤廃し、全面解禁をめざす。
輸出解禁を待ち望む軍需産業は、国際競争力を高めるために「日本政府が外国政府から受注する仕組みをつくれ」とも注文している(7/15経団連「提言」)。先行する韓国では政府機関「大韓貿易投資振興公社」がその役割を果たしていると羨(うらや)んでいる。武器輸出解禁は当然のことで、焦点はその次にあるというのだ。
3文書改定の眼目は軍事費の一層の拡大にある。現行3文書の5年間で「対GDP比2%」を3年(25年度)で達成。新たな目標を掲げるつもりだ。仮に5年間で対GDP比3・5%なら、最終年度は21兆円超。年12%増を続け、5年間の総額は100兆円を超える。3・5%規模は世界一の軍事大国米国と同等。文字通り「軍事大国日本」となる。

核武装への道を宣言
高市が「邪魔だ」と考える重大な制約が「非核三原則―持たず、作らず、持ち込ませず」。
現行の国家安全保障戦略には「平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない」(V基本的な原則ー3)とある。この基本原則を堅持するのかと問われ、「書きぶりを私の方から申し上げる段階ではない」と言葉を濁した(11/11衆院予算委員会)。
高市は、24年総裁選を前に出版した『国力研究』(高市早苗編著)で「『持ち込ませず』については、米国の拡大抑止を期待するのであれば現実的でない」とし、「『非核三原則を堅持する』の文言が邪魔になる」と書いている。
この「拡大抑止(核の傘)」は高市が言い出したわけではない。日米共同文書に初めて登場したのは07年。10年の外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)で「拡大抑止協議」の場を設置し、実務レベルの連携を重ねている。24年には閣僚級会議が持たれ、米核戦略と自衛隊戦力の一体化をはかる指揮系統の統合を確認している。
高市が「邪魔になる」と思っているのは「持ち込ませず」だけではない。自衛隊は核戦争への決意を示している。核ミサイル搭載も視野に入れた原潜建造を新3文書に明記するつもりだ。非核三原則そのものが邪魔だと思っているのだ。
制限なき集団的自衛権
高市の「存立危機事態」答弁にも安倍路線のバージョンアップが表れている。
安倍政権が憲法解釈を変更して導入した「集団的自衛権行使容認」はフルスペックではなく、「限定的」とされている。まず「密接な関係にある」他国が攻撃された場合に限られる。密接な関係とは「軍事同盟」であり、他国は米国しかない。これをオーストラリアやインド、英、仏など「同志国」へと対象を広げようとしている。
もう一つの大きな制約が「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険をもたらす場合」に限られることだ。
日本にミサイルが降り注ぐような場合以外にはありえない想定なのだが、これを経済的打撃(シーレーン封鎖など)にも拡大解釈しようと狙っている。集団的自衛権行使の本質はここにある。いつでも、どこでも、日本の経済権益のために派兵する。これが超タカ派がめざす日本軍の姿だ。
* * *
高市はフルスペックの集団的自衛権を渇望している。「世界で花咲く」「強い日本」は強大な軍事力を必要とする。そのためにも平和憲法の制約を取り払いたいと願っているのだ。
反戦平和運動は安倍政権の戦争法強行採決を止めることはできなかったが、改憲を許すことはなかった。東アジアの平和を守るためにも、超タカ派高市を政権の座から一刻も早く引きずり降ろさねばならない。 |
|