2025年12月12日 1899号

【東京電力柏崎刈羽原発/花角新潟県知事が再稼働容認/公約違反に県民から怒りの声】

 新潟県の花角(はなずみ)英世知事は11月21日、東京電力柏崎刈羽(かりわ)原発6号機の再稼働を容認すると表明。12月2日に開会する県議会定例会で信任が得られれば、政府と東電に地元同意を伝える方針だ。これによって、世界最悪レベルの福島原発事故を引き起こした東電が来年1月にも原発を再稼働させる見通しが強まった。

 花角知事の再稼働容認は県民意識調査でも示された民意を全く無視したもので、2018年の知事選における「脱原発の社会をめざす」「再稼働にあたっては県民に信を問う」との公約にも背くものだ。

条件は整っていない

 新潟県が実施した県民意識調査の結果はどのようなものだったのか。

 「どのような対策を行ったとしても再稼働すべきではない」の項目について「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」を合わせた率(以下、そう思う≠ニ表示)47%、「そうは思わない」と「どちらかといえばそうは思わない」を合わせた率(以下、そうは思わない≠ニ表示)50%で、意見は拮抗(きっこう)している。

 より重要なのは「再稼働の条件は現状で整っている」の項目で、そうは思わない≠ヘ60%、多数の人が再稼働の条件は整っていないと考えている。しかも、そう思う37%の数字もそのまま信じる訳にはいかない。

 なぜなら、避難計画に関する「豪雪時に安全に避難・屋内退避できるよう除雪態勢のさらなる整備が必要だ」「安全に屋内退避できるよう、放射線防護対策の整った施設のさらなる整備が必要だ」「安全に避難できるよう、避難路のさらなる整備が必要だ」の3項目について、そう思う≠ェ90%を超えているからだ。

 県民の9割が避難計画の実効性について不安を抱いている。「再稼働の条件は整っている」とした37%の中でも、避難計画については大半が不十分だと思っているということだ。

避難計画は机上の空論

 昨年元日の能登半島地震で柏崎市は最大震度6強の揺れに襲われた。国道8号や北陸自動車道につながる国道が避難の車で大渋滞した。地震と同時に原発事故が起きていたら、計画通りに避難できただろうか。多くの人が「避難計画は絵に描いた餅だ」と感じたはずだ。大雪が降った場合は車での避難そのものが困難になる可能性がある。

 さらに設問項目にはないが、事故時のバスの確保も見通しが立っていない。避難計画では5`圏内の避難に177台、30`圏内の避難に1357台が必要とされる。しかし県バス協会の会員会社が提供できる台数は200台にも満たない。避難計画が机上の空論にすぎないことは明らかだ。

「議会の信任」は公約違反

 こうした県民意識調査結果をどう見れば再稼働容認という結論が出てくるのか。

 県民世論が再稼働に厳しい中で、花角知事の「地元同意」を取り付けるために政府も東電も知事への「お土産」をつぎ込んだ。

 政府は避難路整備の国費負担や避難所の整備を打ち出したほか原発立地地域の財政支援の範囲を原発30`圏内に広げると表明。東電は県に10年間で1千億円規模の資金拠出と1、2号機の廃炉検討を表明した。

 花角知事は、民意を探るそぶりをしながら、結局民意を裏切って政府と東電の要請に応える道を選択した。

 本来なら、「県民に信を問う」県民投票を実施すべきだろう。だが知事は、14万3千人の直接請求署名を受けて提出された県民投票条例案を潰した県議会で「信任を受ける」という。自民党が多数を占める県議会は知事の判断を承認するだろうが、それで公約を果たしたことにはならない。議会の「信任」は県民の信任に代わるものではないからだ。

 11月25日、県民ら1200人が県庁に集まり、「人間の鎖(ヒューマンチェーン)」で公約違反の再稼働容認を表明した花角知事に怒りの声をあげた。集会決議では、県民投票の実施を引き続き求めていくとしている。新潟県民の取り組みを全国から支援しよう。

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