2025年12月26日 1901号
【コラム 原発のない地球へ/いま時代を変える(34)/高市政権が推進する「次世代革新炉」に未来はない】
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高市政権は、原発政策の面でもそのタカ派ぶりをあらわにしており、2025年度補正予算案にも「次世代革新炉の開発・建設に向けた技術開発」などに122億円を盛り込んだ。原発推進勢力が次世代革新炉のメインと位置づける「小型モジュール炉」(SMR)は、福島で不完全だと見せつけられた従来型原発技術の延長線上のものにすぎない。また「核融合炉」は国際的に見ても実用化できた例はない。
原発推進勢力がSMRにこだわるのは出力調整を可能にするためだ。既存の原子炉には出力が100万kwを超えるものもあるが、季節や時間帯によっては電力が余ることがある。原発をベースロード電源に位置づけるためには出力調整の必要がある。
無謀きわまりない出力調整試験の末に、大型原子炉が暴走して起きたのがチェルノブイリ原発事故だった。運転中の原子炉で出力調整ができないことは、さすがに原発推進側の関係者もわかっている。
原発推進勢力が考える「出力調整」とはこうだ。従来であれば90万kwの大型原子炉を1基建てていたのを、30万kwのSMR3基に改める。個別の原子炉で見れば出力調整はもちろんできないが、原発施設全体では3基のうち何基稼働させるかによって90万kw、60万kw、30万kw、0kw(発電なし)の4パターンを選べるようになる。
SMRにはコスト面の問題も立ちはだかる。面倒なのは、小型でも原子炉には一定の強度や堅牢性が要求されることだ。核分裂という巨大なエネルギーを発生させる技術を取り扱う以上、「出力を半分に落としたから原子炉の強度も半分でいい」という単純な話にはならないのである。
そうなると、原発の出力当たり発電コストは、小型化すればするほど高くつくことになる。しかも、小型になると発電量が減り、売電収入も減る。特に日本では、電力会社は民間企業なので採算に乗せる必要がある。従来の料金体系のまま、SMRで「元を取る」ことが難しいとわかれば、電力会社は料金値上げに動く。ただでさえ物価高にあえぐ市民生活を直撃することは必至だ。「原発を再稼働すれば電気料金は安くなる」と宣伝してきた電力会社の責任も問われることになる。
驚くことに、原子力規制委員会にはSMRの規制基準がない。すぐに実用化されると思っていなかったため、規制基準もないのが実態だ。
核融合炉も同様だ。原子力業界関係者に実現時期をいつ問うても回答が「30年後」のため「永遠の30年後の技術」と言われてきた。彼らは「核のごみも二酸化炭素も出さないクリーンエネルギー」などと無根拠に夢を振りまくが、核融合とは平たく言えば水爆の技術である。事故が起これば破局的事態になりかねず、安全だと言われて信じられるはずもない。
いずれにせよ次世代革新炉に未来はない。このような分野への予算投入は即刻中止し、再生可能エネルギーに振り向けるべきだ。 (水樹平和)
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