2026年01月30日 1905号
【行き詰まりの前に急いで選挙/高市「トンズラ解散」の深層/大軍拡路線にノーの審判を】
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高市早苗首相が解散総選挙に踏み切った。1月27日公示、2月8日投開票の日程で衆議院選挙が行われる。内閣支持率が高いうちに、国会審議でボロが出ぬうちに、選挙を行って「安定多数」を得たい―。そんな意図が見え見えの党利党略解散というほかない。
今しか勝てない
「高市早苗に国家運営を託していただけるのか国民の皆様に直接ご判断をいただきたい」。1月19日の記者会見で高市首相は解散理由をこう述べた。自らの進退をかけるとアピールすることで、「高市人気」を最大限に活かす作戦である。
通常国会冒頭での解散は、新年度予算成立への影響を「最小限にとどめるため」と説明したが、真に受ける者は誰もいない。6〜7割台の支持率を保っている今なら「勝てる」、逆に言えば「今しか勝てない」と判断したことは明らかだ。
「通常国会で審議が始まり、政治スキャンダルなどがでれば、政権の体力がそがれるリスクがある。また首相自身の台湾有事答弁をめぐる日中関係の悪化で経済面の悪影響が出れば、経済政策を看板政策として据える政権に大きな打撃となる」(1/15朝日)
各メディアがこぞって指摘するように、高市が頼みとする支持率が下ぶれする材料が山積みなのだ。たとえば、高市の「積極財政」路線が財政悪化を招くとの懸念から、円売り・ドル買いが急速に進んでいる。人びとの生活を苦しめている円安と物価高が止まる気配はないということだ。
そこに大軍拡のための増税がのしかかる。高市内閣は12月26日、2026年度の「税制改正大綱」を閣議決定した。軍事費2倍化のための増税のうち、実施時期を先送りにしてきた所得税の引き上げを2027年1月から実施する。所得税額に1%を新たに付加する「防衛特別所得税(仮称)」の創設である。
軍事費は膨張の一途をたどっており、26年度予算案では初めて9兆円を超えた。1兆7600億円もかけて長射程ミサイルや無人兵器を大量配備する計画なのだ。自分の発言で中国を挑発しておきながら、緊張激化を理由に軍事費の負担増を市民に強いるとは、悪質極まる所業である。
外交も手詰まり
高市発言が悪化させた日中関係は改善の兆しが見えない。中国商務省は1月6日、日本向けの軍民両用物資の輸出規制を強化する方針を発表した。ハイテク製品の製造に不可欠なレアアース(希土類)が対象に含まれていた場合、日本企業は大打撃を受ける。
関西経済連合会の松本正義会長が「あれは全然だめだ」と高市発言を公然と批判したように、財界内部では高市の対中強硬路線を不安視する声が出ている。そうした状況で、発言を撤回するか否かを国会で追及されていたら、高市は対応に窮していただろう。
政策以外の問題もある。韓国で昨年末、自民党と旧統一教会との癒着関係を物語る内部文書の内容が報じられた。文書には「我々が応援した国会議員の総数は、自民党だけで290人に達する」との記述がある。高市については「高市氏が自民党総裁になることが天の最大の願いである」とまで持ちあげていた。
高市が代表を務める政党支部が政治資金規正法の定める上限をこえて企業献金を受け取っていた問題もある。このように国会で追及されたくない案件をいくつも抱えている。なるほど、行き詰まりに陥る前に「解散でトンズラ」したかったかったわけだ。
排外主義を許すな
自民党が昨年末に実施した情勢調査では「いま解散すれば単独過半数(233議席)獲得を見込める」との結果が出たという。これが高市の電撃解散決断を後押ししたと言われている。高市応援団の一部はすでに「大勝利確定」とはしゃぎまくっている。
作家の門田隆将がそうだ。門田は自身のユーチューブチャンネルなどで「歴史に残る“媚中勢力成敗選挙”が始まる」と吹聴している。高市の大軍拡路線に批判的な者、中国との関係悪化を懸念する者(自民党や公明党などの議員も含む)をまとめて「媚中勢力=中国の手先」と規定。それらを一掃するチャンスが到来したというわけだ。
応援団そして高市本人も「“中国に屈服するか否か”が選挙の争点になれば我が陣営の勝利」と考えている。昨年の参院選での参政党の「成功」に学んだ右派勢力が感情的なナショナリズムや排外主義を前面に押し出した選挙戦を展開することは目に見えている。
デマと憎悪表現が飛び交う選挙戦を許してはならない。市民生活を悪化させ、戦争につながる大軍拡路線をまい進する高市政権に、存続不可能な打撃を与えること。総選挙で求められているのはこれだ。 (M)
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