2026年02月20日 1908号
【DSA/ニューヨーク市支部 ブリン・ダンさんが語る/民主主義的社会主義者 マムダニ ニューヨーク市長を 誕生させたDSAの戸別訪問】
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DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)の一員、ゾーラン・マムダニが1月1日、ニューヨーク市長に就任した。昨年11月の勝利に至る選挙運動でDSAが築いた成果と経験に学ぶために、MDS(民主主義的社会主義運動)は2月1日、オンライン学習会を開催。DSAニューヨーク市支部のブリン・ダンさんが、選挙運動のフィールド・リード(戸別訪問などの現場責任者)としての活動を報告した。報告内容と一問一答の要旨を紹介する。(編集部の責任でまとめました)

ゾーラン・マムダニ市長の選挙運動(キャンペーン)を理解する上で最も重要なのは、彼がDSAの一員として政治的に成長してきた人物であるという点だ。
DSAの一員として成長
ゾーランはニューヨーク市DSAの一般メンバーとして活動を始め、2017年以降、複数の選挙運動に携わってきた。彼は自分自身を、アメリカで民主主義的社会主義の未来を築く、より大きなプロジェクトの一部だと考えている。候補者であるとともにオーガナイザーとしても活動し、DSAを自らの政治的ホームとしてきた。
DSAは「メンバー主導」を原則とし、支部メンバー自身が政治方針やキャンペーンの優先順位を決め、実行する。ゾーランがニューヨーク州議員となっても、私たち支部メンバーと相談し、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地支援反対の「Not
on Our Dime(私たちの金を使うな)」の活動も進めた。
24年夏、ゾーランは「市長に立候補する」という考えを支部の人びとに話し、推薦を求めた。彼自身「支部の推薦が得られなければ立候補しない」と明言し、市長選出馬も、DSAの政治プロジェクトの一環として位置づけられていた。
当初、勝利の可能性は非常に低いと見られていた。本人も、現実的な成功目標は「キャンペーンを通じてニューヨーク市DSAのメンバーを500人増やすことだ」と語っていた。この慎重な見通しは、後に大きく覆されることになる。
キャンペーン立ち上げ
市長選キャンペーンのフィールド活動は、24年12月の最初の戸別訪問(キャンヴァシング)から始まった。ブルックリン、クイーンズ、マンハッタンの複数地域で同時に実施され、雪が積もる寒い日だったが数十人ずつが集まった。
25年1月には、ブルックリンで選挙運動のスタート集会が行われ、約400人のボランティアが動員された。参加者の多くはDSAメンバーであり、「これはDSAにとって過去最大規模の選挙だ」という認識が共有されていた。
その後、戸別訪問は市内各地でほぼ毎日のように実施され、地域単位で継続的な活動拠点が形成された。現場責任者(フィールド・リード)が各地域を支え、活動は予備選から本選まで断続的に続いた。
手の届く生活を
キャンペーン全体を貫いたキーワードは 「アフォーダビリティ(手の届く生活)」 だ。主要政策は以下3点を中心に構成―▽家賃凍結(市内の家賃安定化対象住宅における家賃引き上げの停止)▽保育の無償化▽速くて無料のバス。後に「市営食料品店の構想」も加えられた。
市民との徹底した対話から生まれたゾーランの政策は、「聞けばすぐに意味が分かり、生活の中でどう役立つかが想像できる」ことを重視して選ばれた。市長の権限で実行可能なこと、過去に前例があることも重要な条件だった。「ニューヨークでの生活を少しでも楽にする、現実的な提案」として一貫して訴えた。
ブリンさんとの一問一答
Q.こうした政策と民主主義的社会主義との関連は
―私は、これらを今現実に実現可能な政策として捉え「民主主義的社会主義へ向かう長い道のりの出発点」と見る。資本主義そのものやシステムを転覆させるものではないが、今の経済システムがニューヨーカーにかける圧迫を軽減する。家賃高騰、公共交通、保育費等の負担を減らし、人びとは「生きるために仕事や上司に全面的に依存する状態」から少し自由になれる。そして、民主主義的社会主義者が「統治能力を持ち、富裕層だけでなくすべての人に現実の改善をもたらせる」ことを示すものだ。
Q.なぜ戸別訪問を最重視したのか
―DSAの選挙戦略において、戸別訪問はこれまで前進を生み出してきたボランティア主導の選挙戦略の要(コーナーストーン)だ。私たちには大きな資金がなく、富裕層や企業からの支援も期待できない。だからこそ、人の時間と労力に依拠する必要があった。ニューヨークは人口密度が高く、少ない移動で多くの有権者に会え、効果が高い。
Q.ボランティアとの意思統一はどのように
―毎回の戸別訪問の前に20分ほどのミーティングを行い、目的や政策の要点、なぜ戸別訪問を重視するのかを共有した。重要なのは、「説得する」よりも「質問し、聞く」姿勢を徹底することだった。政策を紹介した後、「あなたにとって一番の問題は何ですか」と尋ねることを基本にした。
Q.若い世代が多く参加した理由は
―多くの若いアメリカ人は、戦争、金融不正、国内不安、気候危機、そしてガザでのジェノサイドに対し、既存政治が応えてこなかったことに失望してきた。ゾーランは同世代としてその経験を率直に語り、とくにパレスチナの人権への一貫した支持は、政治から距離を置いていた若者を再び行動へと向かわせた。
Q.次の課題を一言
ゾーランは、当初は勝利を想定していなかった。しかし結果として市長に当選し、ニューヨーク市DSAのメンバーは約5千人から1万人以上に増加した。
次の課題は、「ゾーランに投票した残りの人々をどう組織するか」だ。



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