2026年02月20日 1908号
【高市が隠した「国論二分」政策/改憲、軍拡、核兵器保有も/白紙委任状など渡していない】
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「逃げ切り勝ち」ということか―。2月8日投開票の衆議院議員総選挙で、自民党は単独で衆院定数の3分の2を超える316議席を獲得した。政策論争を避け、高市早苗首相の「人気投票」に持ち込む作戦がハマったといえる。本当は何が問われるべきだったのか。選挙期間中の高市発言から振り返る。
「逃げません」は嘘
「選挙に勝つ方法―はっきり話せ、しかし何も言うな」。英国の日刊紙タイムズは2月5日付の記事で自民党の選挙キャンペーンをこう評した。政策論争を避け、高市の個人的人気に寄りかかるかたちで、「話し方がわかりやすい」「決断力がある」「この人なら変えてくれる」というイメージの刷り込みに専念していたというわけだ。
こうした「推し活」選挙を象徴するのが、自民党が公示日前日にアップしたショート動画である。作り笑顔の高市が「挑戦しない国に未来はありません。守るだけの政治に希望は生まれません」とカメラ目線で語りかけてくる、あれだ。
この動画はユーチューブで約1億6千万回再生された(2月8日時点)。日本の総人口を上回る驚異の数字だが、これにはからくりがある。再生回数のほとんどは勝手に表示される広告での視聴なのだ。自民党が莫大な広告費をつぎ込んだことは明白だろう。
高市はこのPR動画で「逃げません。ぶれません。決断します」と言い切っている。だが、実際には苦手な討論から逃げ回った。たとえば、各党党首が集まるNHK「日曜討論」(2月1日)への出演を生放送30分前になって突然キャンセルしたことである。
高市は「手を痛めた」と釈明したが、この日の午後には選挙応援で岐阜県と愛知県を訪れている。明らかに怪しい。実は放送2日前に出演取りやめが決まっていたと「官邸関係者」が明かしている。最大の理由は「旧統一教会に関する追及を避けるため」だった(週刊文春2月12日号)。
円安ホクホク発言
このズル休み、高市及び自民党にとっては大正解だった。番組に出演していたら非難の集中砲火を浴びて立ち往生していたことは確実の発言を、高市が放送前日にやらかしたからである。川崎市内での集会(1/31)で飛び出した「円安でホクホク」発言のことだ。
いわく「いま円安だから悪いって言われるけれども、輸出産業にとっては大チャンス」「もっと助かっているのが外為特会(外国為替資金特別会計)の運用。今ホクホク状態です」。人びとを苦しめている物価高騰に拍車をかけている異常な円安を当事国の首相が肯定的に評価したのである。
高市の幼稚な経済認識に、日本の経済界もさすがにドン引きしたようだ。2月2日には、みずほ銀行が「高市演説を受けて〜危うい現状認識〜」と題したレポートを発表。高市演説全体を貫く「円安になると国内投資が戻ってくる」という認識を「これは前時代的な発想である」「アベノミクスを経て失敗が立証されている」と一蹴した。
高市が「ホクホク」と表現した外為特会の運用益は、大軍拡政策の主要財源の一つになっている。政府は軍事費確保の策として、政府の税外収入から資金をプールする仕組みを設けた(防衛力強化資金)。その大半を占めているのが、外為特会受入金と同特別措置受入金である。
高市流の「積極財政」は経済不安を加速させる。労働者・市民にとって良いことは何もないのだ。
反中国の行き詰まり
レアアース(希土類)をめぐる発言もひどかった(2/4岡山県倉敷市での街頭演説)。レアアースが豊富にあるとされる南鳥島沖の深海5700mから、政府主導の研究チームが泥の採取に成功したことに触れ、「だから日本は、これから今の世代も次の世代もレアアースには困らない」と豪語したのである。
今回の試験は技術の確認が目的だ。引き揚げた泥の中にレアアースが含まれているかどうかは分析待ちだし、採算性の評価は別の話である。そもそもレアアースの精錬は中国が世界シェアの大部分を占めている。1年や2年でどうにかなる問題ではないのだ。
高市は自身の台湾有事発言がもたらした中国との関係悪化を正当化するために、「重要資源を止められても大丈夫」と言いたかったのだろうが、事実と願望を混同している。意識的ならペテン師だし、そうでないならネトウヨの同類だ。
大手電機メーカー幹部は「首相は産業界にどれだけのマイナスのインパクトがあると思っているのか。けんかの仕方を間違っている」と不満を漏らす(1/31朝日)。選挙に勝っても、対中国強硬路線の行き詰まりに変わりはないのだ。
ついに改憲を口に
「国論を二分するような大胆な政策に挑むため」。衆院解散に踏み切った理由を高市はこう説明したが、中身ははっきり語らなかった。選挙戦でも明言を避けてきた。とはいえ支持者の前では調子に乗り、本音を漏らすこともあった。
新潟県上越市での応援演説(2/2)では「憲法になぜ自衛隊を書いてはいけないのか。彼らの誇りを守り、しっかり実力組織として位置づけるためにも、当たり前の憲法改正もやらせてください」と訴えた。福岡県福岡市では、戦争の長期化に備える「継戦能力の強化」を口にしている。
自民党内からは将来の核兵器保有の布石として「非核三原則」の見直しを求める声も出ている。高市自身は、現行の安保3文書をまとめる際、「持ち込ませず」の削除を求めていたことを自著で明かしている。
「国論を二分する政策」の正体は、大軍拡路線を全面的に展開することであり、その妨げとなる日本国憲法の改悪だ。絶対に許してはならない。私たちは高市に白紙委任状を渡したわけではないのである。 (M)

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