2026年03月20日 1912号

【米・イスラエルのイラン指導部斬首作戦/高市首相は侵略者の側に立った】

 米イラン「核交渉」の進展が報じられた2日後、米トランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相はイランを空爆(2/28)。最高指導者ハメネイ師をはじめ軍幹部・政府高官を爆殺し、イラン民衆に体制転覆を呼びかけた。紛れもない「力による現状変更」=侵略戦争だ。高市政権はこの行為を非難するどころか擁護している。日本政府は侵略する側≠ノ身を置こうとしているのだ。


トランプの事情

 トランプ大統領はイランとの「核交渉」が継続する中で爆撃に踏み切った。「交渉」は戦闘態勢を整えるための時間稼ぎだった。

 なぜ、トランプは攻撃に出たのか。今年11月に中間選挙を控えるトランプは、なんとしてでも共和党の勝利が必要だ。だが支持率は低下。好材料は何もない。

 看板の「アメリカ・ファースト」政策はトランプ支持者にとっても「期待外れ」だ。典型的なのが「関税政策」。高関税により約2000億j(約30兆円)増収、これを市民に還元すると豪語したが、結局は輸入品の価格が上昇し、インフレの一因となった。実際、増収分の90%以上を米国企業・消費者が負担したのだ。

 さらに、連邦最高裁判所はこの関税政策を違憲と判断(2/20)。返還訴訟が相次いでいる。

 トランプの支持率は40%前後、不支持率は60%近い。イラン爆撃を支持しない43%、支持27%(3/1ロイター)。米国の利益追求のための軍事行動は「行き過ぎ」56%とする声が広がっている。

 さらに未成年への性虐待、機密漏洩などが疑われるエプスタイン文書にもトランプの名は登場する。支持者離れは避けられない。イラン攻撃は支持挽回には役立たなかった。それでもイラン攻撃を続けるのは、イスラエル・ロビーからの支援に頼るしかないからだ。中間選挙に投入する多額の選挙資金が必要だったのだ。

ネタニヤフの事情

 イスラエルのイラン爆撃の理由も選挙事情が大きく影響している。

 イスラエル国会は3月31日までに2026年度予算が成立しないと自動的に解散、選挙(1院制、定数120人)になる。予算が成立しても任期切れになる今年の10月27日までに選挙を実施しなければならない。

 予算成立は微妙だ。ユダヤ教神学校の兵役免除法の同時成立を主張する超正統派政党が揺さぶりをかけているからだ。ネタニヤフは、いずれにしても支持率が高まる有利な状況を作り出し、解散選挙に打って出るつもりでいる。

 ネタニヤフは23年10月のハマス攻撃の責任を問われ、辞任を求める声が根強く、低支持率が続いていた。さらに、汚職事件(収賄、詐欺、背任)の裁判が継続。20年5月に初公判が開かれてから6年にも及ぶ。

 イスラエル国内ではイラン攻撃は歓迎されている。世論調査では、約81%が支持。63%は「イランの現体制が崩壊するまで攻撃を続けるべき」と回答している(3/5NHK WORLD JAPAN)。

 ネタニヤフは報道がイランに集まる中で、レバノンへも侵攻し、ヒズボラをたたいている。今月中にガザに大規模な軍事攻撃を計画。ヨルダン川西岸では入植者の土地登記による実質的な併合が進行している。「対テロ戦争」パレスチナ人追放に徹することが、支持を固める道だと信じている。

高市のめざすもの

 「力による現状変更は許されない」とロシアや中国を厳しく批判する日本政府だが、米・イスラエルは批判しない。高市首相は「詳細な情報がない」「法的評価は控える」と逃げの答弁からイラン非難に転じた。

 高市はトランプの「先制攻撃」やネタニヤフの「自衛戦争」を支持。自らのめざすものだと考えている。米・イスラエルは、イランのミサイル基地を破壊し、防空能力を奪い、司令部を攻撃した。まさに、日本政府が「敵基地攻撃能力」の使い方として説明してきたことだ。しかも「先制攻撃」が当然のことになる。

 だが最初の一撃で戦闘は終わらない。イランはイスラエルだけでなく周辺国の米軍基地にミサイルを撃ち込んだ。これは日本であれば、国内の米軍基地のみならず、自衛隊のミサイル基地が攻撃目標とされることを示している。

 戦闘をやめよ。米・イスラエルのイラン攻撃はイラン国内の民主化運動にも打撃を与えている。戦争は民主主義の基盤を破壊する。国際的な連帯を強め、戦争勢力を包囲しよう。

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