毎朝新聞を見ていると、思わずつぶやきが出るときがあります。ときには小さな叫びともなります。しかし、つぶやきや叫びはやがては消えていく。そこで、朝のつぶやきや叫びを書きとめることにしました。
これを始めたのは二〇〇〇年二月一日から。そのきっかけとなったのが、「辺野古区長 自殺未遂」の記事でした。
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今、普天間基地の移設問題は「十五年使用期限」問題で県民が振り回されているように思える。じゃ、十五年使用期限が認められたら、基地新設を容認するのか。そうではないはず。十五年問題は警戒を要すると思う。
そうではなく、県民・市民の声は移設反対。それは九七年十二月二十一日の名護市民投票で示されている。
市民投票の前日、私はいてもたってもおれなくて名護に応援にかけつけた。名護の後輩たちを励ましたかったから。
そして迎えた市民投票の結果は勝った。「ほら、勝ったじゃないか」と喜んでいたら、名護市長が総理官邸で受け入れを表明したという。その晩はくやしくて眠れなかった。
その後、名護市長選や県知事選を経て、昨年末に知事・市長が受け入れを表明。政府が移設先として名護市辺野古沿岸域を閣議決定した。
そんなときに起こったのが、若い辺野古区長の自殺未遂事件だった。
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つぶやきを書きとめるノートは、見開きの左のページに新聞の切り抜きを貼る。右のページに、それを読んでの私のつぶやきと三十一文字(みそひともじ)を書き添えることにした。
自殺未遂事件は、なにやら不幸なことが起こりそうな気がしていたときなので、ものすごいショックだった。
それで二月一日のつぶやきは「ついに出た!」。書き添えた三十一文字は、
毒を飲む人も出るほど
この島の 苦悩知らぬか
国の司らは
これを一番最初にもってくるのは、あまりにも胸が痛い。そこで二月五日に出た九州の矢ガモのことをノートの最初にもってくることにした。
矢が刺さったカモを見ていると、「おまえ、沖縄みたいだね」と思わずつぶやいた。それに、こう書いた。
射抜かれし
矢をば背負いたる渡り鳥
汝(な)が名は矢ガモ
沖縄の姿
こうして朝のつぶやきと三十一文字を書き綴ったノートは二か月でいっぱいになった。今は三冊目が終わろうとしている。
私はこのノートに「草の根は叫び続ける」のタイトルをつけた。
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